下書きメモブログ

小説作ってみました

朝マック

今日は朝マックを食べに来ました。
いつもならコーラかコーヒー頼むけど、キャラメルラテを注文!
「うむ、間違いない。」
昔よく母親が「マックのコーヒーが1番うまいわぁ」って言ってたのを思い出す。
今は多分、セブンの入れたてコーヒーが1番♪♪と言うと思う。
朝の通勤ラッシュの時間に慌ただしく動く人と車を眺めるのは実に気分が良い事ですな(笑)

私が死んで生まれた日7

テツさん(住職)と駐車場まで向かう途中、何となく視線を感じて思わず振り向いたが、私を見ている人物は一人もいなかった。参道を通っている時は身体がビリビリするし気持ち悪いなと思いながらみんなに遅れて駐車場に到着。勢いあまってテツさんにぶつかってしまった。

ぶつかってしまった.......ん?

テツさんは「うぉっと」と少しバランスを崩しながら自分に体当たりしてきた奴は誰だ?と振り返り犯人が私だとわかってこの世の物と思えない声で「ふぇ?!」と驚いた。

私も自分の身体が実体化してるのに驚いたがテツさんの向こう側で 雷にボンネットを黒焦げにされた車に視線が釘付けになっていた。見慣れた車....彼のだ。テツさんもこっちは後回しだと言わんばかりに振り向いて車に近づいていった。野次馬達が「車って雷 大丈夫じゃないのかよ.....」「何だアレ....」とコソコソ話している。テツさんが私を見て(お前か?)というジェスチャーをしたが、心外だ冤罪もいいとこだ。私は頭をブンブンと横に振って否定した。車から少し離れた場所にいたお坊さんに近づいて聞くと彼と元同僚が車に乗ろうとした時に雷が落ちたらしい。

ふと視線を感じた方に目をやると彼が私を睨んでいる。私の仕業だと思っているようだ。

(ふんっ。私じゃないけどザマァwww)

人に恨まれる事をして生きてる2人。

神さんに好かれてるみたいだけど死んだ私。

人の生死は普段の行いとか何か関係あるのだろうか。それともその逆で全くの運なのか。現世は修行の場だから 苦労は買ってでもしなさいと言っていた高齢者って最近少ない気がする。あの2人は苦労する側じゃなくて苦労させる側の必要悪って事かな、魂を磨く事は出来ないけど他の修行者の糧になってくれるという(笑) ありがたや〜(嫌味) 類は友を呼ぶというし、だから生かされ幸せそうなのかな.....。わからない。でも、なんか不公平を感じる。

 

結果、車は廃車。2人はタクシーで最寄り駅に向かう途中、またも落雷に襲われ 驚いたドライバーが運転を誤り事故を起こしてしまう。数台の乗用車を巻き込む酷い交通事故で死亡者もでたがドライバーは奇跡的に軽傷、彼と元同僚は重傷だそうだ。

(それでも2人は生かされてる......。)

 

実体化状態の私は、生きていた時とは違う姿になっていた。年が逆行した。若返った!(喜) はたからみれば高校生くらいに見えるだろう。あれからお寺のご本尊に挨拶し、境内をうろちょろしていた。綺麗に敷かれた小石をザクザク鳴らして歩いたりご神木に触って頬擦りしてみたり石灯篭の中に住んでいた蜘蛛を観察してみたり参拝者の人間観察したり.....。まるで子供のように目に入るモノ全てに興味がわき楽しかった。あっという間に暗くなりテツさんの彼女の美由紀さんが「冷えてきたから」と呼びに来た。晩御飯をご馳走してもらいテツさんと美由紀さん3人のお坊さんとでお喋りしながら楽しく食べた。その時に あの2人が事故にあったようだとテツさんに知らせが入った。

「テツさんあの雷って......。」

「そうだなぁ....俺にもさっぱりわからん。」

テツさんはなんとなくわかるが確実じゃないからそういう言い方で返してるようだった。

「ねね、楓ちゃんも雷出せるの?」

美由紀さんはあっけらかんと私に問いかけた。端整な品のある小さな顔の割には釣り合わない 肝っ玉母さんのような言動をする女性だ。一緒にいて気持ちがいい。

そして楓とは私の事である。

「窓を割ったり、停電を起こした事はあるけど雷は出した事ないよ....。」

「ふーん。ねぇテツ。それで、楓ちゃんはどんな神様に護られてるの?」

「それも、まだわからん。」

「ふーん。まだまだこれからって事なのね。」

「そういう事だな。」

つっけんどんな2人のやり取りだが、深い信頼を感じた。(この2人の子は幸せになるな。) 唐突にこう感じた。もしかしたら、良い知らせが近いのかもしれない。

一緒に食卓テーブルを囲んで食事していた3人のお坊さんの内のひとり、ポッチャリ系男子のユウジさんが会話に入ってきた。

「俺、雷落ちた時に楓ちゃんの後から駐車場に向かったんスけど、楓ちゃんをずっと見てる霊体見たっス。楓ちゃん、気づいてたっスか?」

確かあの時 視線を感じて振り向いたが誰が見てたのかわからなかった。そうユウジさんに伝えた。

「そうっスか.....大柄で長髪のオジサンだったっス。心当たりは?」

「ないっス。」

ユウジさんの真似で返したからみんなクスッと笑った。ユウジさんは少しニヤついて「いや、俺の真似はいいから〜。」といってまた皆んなに「でも、嬉しそうじゃん。」と笑われていた。ユウジさんは小さな時から霊感が強過ぎて変わった子扱いを受けて育ったそうだ。小学生の頃テツさんに出会い 能力者の現世の生き方を教えてもらいながら高校を卒業。そのままテツさんの元へやって来て住み込みで現在修行中なのだそうだ。霊体の霊力を見るのに長けているそうでテツさんも「頼りになる」と言っていた。

「それでユウジ、そのオッサンの霊力は?」

いつも霊体を見た時は得意げにどんな霊体なのか話すユウジさんなのだが、今回はなかなか話さないので痺れを切らしたテツさんが聞いた。

「それがっスねテツさん。何も感じなかったっス。」

ユウジさんは「こんなのは初めてだ」と自信を無くした表情を浮かべて苦笑いした。

「珍しいな.....。」

テツさんはそういうと考え込んでしまった。

 

「さて、食器片付けるからみんな移動して〜。楓ちゃん先にお風呂入っちゃいなさい。」

肝っ玉美由紀さんはそう言って食器を洗い始めた。

お坊さんグループはテレビのある部屋へ、テツさんは自室へそれぞれ移動。 私はお風呂に入った。久しぶりの湯船だ♪♪ 水の感触が懐かしい。

それにしても、今の私の身体は何で出来てるんだろう....。元の身体は事故後、火葬され灰になっている。人間に必要なのは、炭素・水素・窒素・酸素・リン・硫黄 だそうだ。これらを集める事は簡単かもしれないが、だからといってすぐ人間が作れるわけではない。この身体は今これらの元素で出来ているのかも疑わしいが、生きてた頃と何ら変わりがない。あの時のビリビリが引き金にはなっているのだろうけど....。

(謎だらけだ.....)

ブクブクと口から空気を出しながら湯船の中へ沈んだ。

 

 

私が死んで生まれた日6

私が『地蔵』の訓練を始めてから数日。

相変わらず元同僚は彼の部屋に来て腰振って帰るというのを繰り返していたが、訓練の甲斐もあり心穏やかに見流していた。

ある日......。

「ねぇ、あれから何も起きてないけど念の為にお祓い行こうよ。また忘れた頃に来るよ?今度はケガとかしたら怖いし。」

(ふんっ、また来る⁇ ずっと居ますけど(笑))

「大丈夫だって。」

「大丈夫ってなんで分かるの?(彼)霊感なんかないじゃん?2回も起きてるんだよ?今度は割れたガラスが飛んでくるかもしれない。私、いい人紹介してもらったの、お寺の住職なんだって実績あって凄い人らしいよ?行こう?ねっ?」

「いや、必要ないって。」

「ダメ!もう行く日も決まってるから!」

「.............。」

 

(お祓いか......。)

強制的に成仏させられるのは嫌だが、この場から解放されるのはありがたい。もう コイツらの性癖を見せられるのにはウンザリだ。

同時に、(いよいよ彼とも本当にお別れだ。) もう、寝坊しそうな時 忘れ物しそうな時に教えてあげられなくなる。仕事が忙しくてなかなか寝付けなさそうな時頭を撫でてあげたこともあった。元同僚にイタズラして一人でゲラゲラ笑ってた時もある。

寂しいけど私はここに居てはいけない。それに早く楽になりたい。

 

【お祓い当日】...........

慌ただしく出掛ける用意をする2人......

それを眺める私......

2人は部屋を出て行った。彼が後から部屋を出る時 数秒の間目が合った気がしたが、気のせいだろう.....彼は霊感がない。

(いよいよだ.....)

祓われる側は初めてだし、そもそもお祓い体験がないために どんな感じでコトが始まるのかわからないが期待でワクワクしていた。

(私は充分罰を受けた。もう解放して下さい!)

静かに『地蔵』になり時を待つことにした。

 

半日過ぎた......

まだだろうか.....お祓いしてくれる住職はインチキ和尚だったのだろうか.......

 

ん?

きたか??

何処からか引っ張られる感じがある。少し気持ち悪い。

一瞬気が遠くなった。バリバリッとすごい音がして強く引っ張られた。

畳と木材の匂いがした。後から線香の匂いが強くなった。

(あーあの時と同じだ....懐かしい感覚だ)

強い吐き気と目眩に襲われながらしかめっ面で目を開ける。以前、彼の所に飛んできた時もこんな風に気持ち悪かったっけ......。

襖で仕切られたL字型の和室には開けられた襖の前に彼と元同僚が並んで正座していた。

お祓いをしてくれている住職は少し離れてL字の角の方に座り数珠をジャラジャラとテンポよく鳴らしながらお経を唱えていた。私は左手に住職、右側に彼達が見える場所に正座した。他にお坊さんが5人いて私と向かい合う形で一列に並び、みんなお経を唱えている。

しばらくの間、住職達は激しくお経をあげていたが急にピタリとやめた。

(ちょちょちょ‼︎まだ成仏してないよ⁈)

目を丸くして住職を見ていると、2人の前に座りゆっくりと言葉を吐いた。

「除霊が必要なのは彼氏さんじゃないな......」

「え⁇」

元同僚はビックリして住職を見た。彼も住職を見ていたが驚いてはいないようだ。

「君には分かるね?」

住職はそう言って彼を見つめた。

彼は重たい口を開いた。

「........はい。」

住職は続けた。

「亡くなった貴方の恋人は私には除霊する事は出来ません。あまりにも神々に気に入られ過ぎています。身分が違いすぎて手が出せないのです。ただ、彼女も貴方の側にいる間 非常に辛い思いをしてあの場から離れたいと望んでいましたので、自由になれるようにはしました。今まで起きていた事はもう無くなります。」

「.......はい。」

(ええええええええーーーー!!!)

神々⁈ 手が出せない⁈ 身分が違う⁈

........意味がわからん。

あんなに辛かったのに.....気に入られてるって。

混乱し過ぎて目が回る....成仏出来ないけど自由なのは確からしい、助かった。

「さて....彼女さん。」

「はい?」

「貴方には自覚がないようですが 動物霊2体 人の霊が2体 女性の生霊が1体 憑いています。」

「?!」

「生霊は厄介です。先に生きてる人の方を優先して問題解決して下さい。心当たりありますよね?」

「うーん......わからないです。」

「では、生霊が訴えている事をお話ししましょう。」

元同僚は一瞬「待って」と言いかけたが住職は構わず続けた。

「生霊の女性は『騙された』と言っています。ホスト通いの借金を払わされていると、そして私を悪者にし被害者を装い自分の恋人も奪われてしまったと.....本当に許せない!だそうです。」

「違う.......。」

元同僚は、言い訳しようとなにか言いかけたが下を向いて黙ってしまった。あまりにも的確に事実を霊視されたので驚いているようだ。

(ザマァ!!)

私は元同僚の前で(やーいやーいあーばーずーれー♪♪)(罰当たりめ!あっかんべー)とお尻ペンペンしていた。

住職とお坊さん数名が「プッ」っと吹き出した。

(!!!!そうだ見えてたんだった!!!!)

私は恥ずかしくなりそっと座っていた場所に戻り小さくなって正座した。彼は元同僚と同じくずっと畳を見ている。

しかし、さすが凄腕の除霊師だ。丸々見えちゃうらしい。良い能力を持っている。

「もうお帰りください。始めにお話しいただいた彼氏さんの問題は解決しました。」

「..............。ついでに私の除霊もしてくれませんか?お願いします!」

住職はため息をついて.....

「彼女さん、残念ですがそれは出来ないのです。それぞれの霊体は貴方に憑いた時期は違いますが今では生霊の女性がリーダー的存在になっていて霊体にもエネルギーを与えて個々を強くしています。彼女との問題を先に解決しなければ、除霊出来たとしてもまた違う霊体が寄ってきてしまうのです。」

「.........。」

「彼氏さんは 貴女に霊体が憑いているのも理解していましたし、亡くなった恋人に他の霊体が近づけない事も気づいていました。霊障を受けない様に彼の家で会うことが多かったのではないですか?」

「確かに2人で出掛けるのはほとんど無かったけど.....。霊感あったの⁇」

「...........。」

(霊感あったの⁈)

「彼氏さんは亡くなった恋人を利用して自分を守ろうとしました。そして長い間 苦しめた。今日こちらに来て頂いて正直ホッとしています。自ら動けなくなってしまった亡くなった恋人を貴方達から助け出す事が出来た。」

「...........。」

(利用....???)

「たまたまであったにせよ死者を利用し、更に苦しめた貴方達の行為は許せません。料金は要りませんのでお引取り頂いて もうこの境内の地を踏む事をお勧めしません。帰りもお気をつけて下さい。」

お坊さん達は、2人に「お引き取り下さい。」と出口へ促した。

彼はジッと私を見つめていた。

「ごめんな.....。動けなくなってるとは思わなかったんだ。嫌ならいなくなると思ってた。」

(.......ふざけんな。)

自分を守るため⁇ 私はなんてクソ野郎を愛していたんだろう。悔しさと悲しみで涙が出てきた。

(あのタイミングで死んでよかったんだ....気付けてよかったんだ....感謝しよう....悔しいけど。)

2人は出て行った。和室に住職と2人きりになった。

「大変な目にあったね。よくぞ腐らず辛抱してくれた。今日会えて本当によかったよ、しかし成仏できないって事は まだ君にはこの世界でやる事があるみたいだ。」

(そうみたいですねぇ......早く楽になりたいのに.....)

「好きなだけココにいていいよ?」

(ありがとう住職さん。)

住職はニコッと微笑んだ。

「居てくれると私も心強い。」

意味深な言葉を残し住職が部屋を出た。私が気づいていない私の事をまだ他に住職は知っているんじゃないだろうか....?。

(お言葉に甘えてしばらくココに居よう。)

そう思った時、外で凄い音がした。乾いた空気が弾けたような音....そう雷が落ちた時みたいな.....。

何が起きたのか確かめるため慌てて部屋を出た住職の側へ行く。

「テツさん!大変です!さっきのお客の車に雷が落ちました!!」

「やっぱりすぐ来たか....。」

住職はテツさんって呼ばれてるんだ.....。

なんだかこうなる事がわかってたような言い方が気になったが、みんなで慌てて駐車場へ向かった。

 

私が死んで生まれた日5

色のない世界.....

小さな細胞が集まり蠢くざたざらした それでいて柔らかな深い深い海のような世界.....

産まれる前の母親のお腹の中ってこんななのかも........

暖かくて心地がいい.....

漂っている....

ただひたすらふわふわと......

このままずっと漂っていたい......

 

ショックだ。もう早く成仏したい。

憎しみや悲しみのない世界へ行きたい。

最愛の人に裏切られた。

何故?

何故お迎えはまだ来ない?

なぜ.....

はぁ.....

 

どのくらいの時間が流れたんだろう。

かなり経った気がする。

そろそろ漂っているのにも飽きてきた。

ここから出たい.....そう思った。

その瞬間、待ってましたとばかりに出口らしき光が見えてきた。光はどんどん大きくなり近づいてくる。眩しくて目を細めた。光は私を飲み込んだ。

 

ずっと色のない所にいたせいか周りの色がある景色に目が慣れるのにしばらく時間がかかった。次はどんな所だろう......こんな期待もアッサリ裏切られる。

(はぁ....)

忘れるために漂っていた時間を返して欲しい。

そう、引き戻された場所は見慣れた箱の中....彼の部屋だ。しかも卓上時計を見ると私がガラスを割った数日後。

それからというもの毎日のように彼の裏切りの場面を目の当たりにする。楽しそうにLINEや通話。幾度となく元同僚は彼の部屋を訪れ見たくもないものを見せられる。他の場所へ行きたくても鎖で繋がれたように身体が動かない。

(私は罰を受けているのか?)

よく考えれば、私が死んだ後の彼の行動にいちいち腹を立てていても仕方ない。彼は私を裏切っているわけじゃない。もう私はいないのだから。幸せになって欲しいとも思っている。なのに毎日 彼の全てを見せられる。

やっぱり、未練 憎悪 裏切り 悲しみ が私をここから離れられなくしているのだろうか....。

まだ生きていた時に裏切られていたって事には心底怒っているが、もういい加減 ウンザリだった。こんな自分が嫌いになった。神様をも憎みたい気分だ。人間なんて大嫌いだ人間の自分が大嫌いだ。輪廻なんかしたくない。もし成仏できて偉い神様に会えたら魂を抹消してもらえないか頼んでみよう。

そんなこんな考えてると、またあの女は彼の部屋に来た。もう その人を見るだけで何処で何をしてきたかなんてわかっちゃう様になってきていた。これはテレビに出てるタレントや俳優、彼が電話している相手でも見えた。凄い能力だが見たくないモノまで見えるから精神に良くない。

婚約者の家から笑顔で出てくる元同僚。途中スーパーで買い物をしてこの部屋まで来た。

(今日も手料理作ってあげるんだ....)

『通い妻』.....まさにこれだ。再びこの部屋に引き戻されてから3ヶ月ほどの間、元同僚はほぼ毎日の様に来ている。元同僚とその婚約者は別れてはいないものの会う回数は減っている様だった。

(コッチに乗り換えるのも時間の問題だな...。)

あばずれだけど男ウケがいいのはこういう女性らしい健気さを持ってるからなんだろう。私は料理が下手だから作らない!と言い切ってたまにしか作らなかった。

彼は台所に立つ彼女を眺めて幸せそうな顔をしている。

(ですよねぇ〜.....)

完全にあばずれに負けた。愛情はあっても尽くす事を怠った私が悪い。人の世は不公平だ。そしてあの世もむごい事をする。私は押されて電車にぶつかって死んだ。少しは哀れに思い優遇してくれてもいいじゃないか?それなのに見たくもない元恋人の一部始終を見せて、自分と他の待遇の差を思い知らされる。自分が優っていればまだ救われるが残念ながら逆だ。

(なんの罰ゲームだよ......)

フツフツと怒りが込み上げてきた。

 

(本当にもういい加減にして‼︎‼︎‼︎‼︎)

 

パリンッ!ガシャガシャーーーーー!!!

 

あ......

 

またやっちゃった。

 

あばずれが大騒ぎしている。勢いあまって蛍光灯も破壊してしまった。というか、辺り一帯真っ暗になった.....停電させてしまったらしい。我ながら素晴らしい能力だ。

「またか......いい加減成仏しろよ....。」

......。

やはり気づいてましたか。

(私だっていたくてココにいるわけじゃない‼︎)

..........また、物が壊れる音がした。

 

『いい加減....』と言われた。またまたショックだ。そんな言い方って.....。いい加減にって思ってるのはこちらの方だ。

こんな事なら ザラザラ海で漂ってた方がマシだった。なんとも切ない。死してなお 侮辱され 嫌われ 傷つけられるとは....。これ以上 苦しくなるのは嫌だ。ここから離れる事を考えよう、このままではまたポルターガイストを起こしてしまう。もしかしたら爆発して2人を殺してしまうかもしれない。それに殺したって私にはメリットはない。同じ土俵に来られるより現世でいいだけ苦しんでくれた方が私の心はきっと満たされるだろう。だがそんな気持ちも虚しく彼は私が死んで不幸どころか、2人は現世で1番幸せそうだ。(チクショーーーー‼︎‼︎‼︎)

 

何かいい方法はないかと考えた。すでに試してみてはいたが、彼の元へ来たきっかけは(何してるだろう...?)と思い浮かべる事だった。両親 祖父母 親戚 友人、片っ端から思い浮かべた。でも、何処へも行けなかった。人間がダメなら神様だ。祈った。でもダメだ。こうなったらもう.....自分が地蔵になるしか手は無いのか....目の前で起こる出来事を聞き流すならぬ見流す。心を無にする努力をする......。

...........................................。

.....................................。

..........................。

 

(ひとが『地蔵』になろうとしてんのにセックスしてんじゃねぇぇぇぇ!!猿どもめっ!)

自分の時と全然違うじゃないか!と彼を睨みながらポルターガイストが起きない様に心を抑える。無だ....無になるんだ........。

 

...........。

.......................。

.................................。

 

私が死んで生まれた日4

(彼がLINEをしている相手は誰なんだ?)

テンポよく流れていく吹き出しの名前はフルネームだった。そして 見覚えのある名前....。女だ....しかも私が大嫌いな女(怒)

(なんて事を......プルプル)

そう2年前、彼と付き合う頃に彼にちょっかいを出してきていた女がいた。同僚だ。3人とも同じ会社だった。私と同僚が中途で入社後間もなく彼は配属が変わり私達の部署へ移動してきた上司だ。彼とすぐ打ち解けた私は勤務中も仕事の事をよく相談する仲だったが、同僚はその場面を見ると決まって大きな音やリアクションで気を引き私達の会話を中断した。とにかく男と見たらベタベタするのが性質なようで、サバサバ系親父ガールの私には理解できない生き物だった。私が居ない時は彼にピッタリくっついて仕事したりしていたらしい。男性ばかりで同僚と私だけ女で しかも ベタベタするだけでホイホイ言う事を聞いてくれる男どもがいる職場は彼女にとって天下だったろうが潔癖な私にとっては地獄だ。彼女には婚約者がいるのを知っていたから余計だ。だが、職場の男性陣には関係なかった様だ。と、言うより事を荒だてたくないという方が正解だったのかもしれない。潔癖な故、食事に誘ってくれる彼の事も信用できず何度か断っていたがめげずに誘ってくるのでOKしたら あっと言う間に付き合い 今に至るのだ。彼と付き合って1年半が過ぎた頃、我慢の限界で私は会社を辞めた。

怒りでフルフルしていたが、会話の内容が気になる。見ていると同僚の婚約者の話のようだ。

(自分の婚約者死んでるのに恋愛相談受けてる場合かよ!相談する奴も奴だ(怒))

 

[もう別れようかな]

[もう少し様子みたら?]

[あの時からずっとそればかりじゃん?私、ずっと(彼)の事狙ってたのにさぁ〜付き合っちゃうんだもん]

[あはは]

[笑って誤魔化さないでよ〜本気だよ?]

[.........]

[今すごく寂しいでしょ?私が添い寝してあげる♡]

[うーん........]

[もう死んじゃったから今度は気兼ねなくお泊まりできるね♡]

[じゃ〜またお願いしようかな(笑)]

 

........‼︎‼︎‼︎

(この2人は.....もしかして私と彼が付き合ってる間も関係があったのか⁈)

「そりゃ彼女死んでも寂しくないわな!」

って悪態をつきたかった。何でもいいから汚い言葉で目の前にいるこの悪魔に一言 言ってやりたかった。

私の何かがプチンッと弾けた。

パリンッ‼︎ガシャガシャーーーーー‼︎‼︎‼︎

静かな夜に大きな音が鳴り響いた。

私が映っていた窓には私の姿もガラスも無い。枠だけが夜風に撫でられかすかに揺れた。

 

私が死んで生まれた日3

脳が揺さぶられる様な感覚と酷い目眩がした。

「気持ち悪い....」

込みあげる吐気を唾を飲み込んで抑えるとゆっくり目を開けた。

目の前には私に背を向けてベットの端に座りスマホの画面を見下ろしている恋人の姿があった。

ごめんね....。

急に愛おしさが溢れてくる。喧嘩して険悪モードだったのも忘れている。

彼はいつも真剣に何かをしている時、子供の様に背中を丸めて集中していた。その姿を見るたびに私は夢中になって遊ぶ子供を幸せそうに眺める母親の様な気分だった。

コレが母性というもの....か?

相変わらず背中を丸めて真剣にスマホをいじっているのを見てホッとした。同時に(あまり悲しそうじゃないな....) と感じ少し寂しくなった。突然の別れにとりみだしてゲッソリしているのかと思ったが よく見れば顔も普通.....いや、私が生きてた時より元気そうだ。

(私はそんなに負担をかけるタイプの女だったのか.....?)

ショックだ。非常に不愉快だ。死んで分かるなんて.....。腹が立ったが その気持ちはすぐ反省へと変わる。

(死んでよかったのかも。)

ふと私と彼の先にある窓に目がいく.....

スマホの画面を見ている彼の後ろに私の姿が映っている

......あれ?

映って...........る⁇⁈‼︎

おかしくない⁇⁇

(私は本当に死んでるのか⁇)

昔観た吸血鬼が出て来るホラーな洋画では鏡に吸血鬼が映らないシーンがあった。それ同様、この世の者でなくなった私も鏡に映らないと思い込んでいた。

驚いてビクッとなった私を彼に気付かれやしないかとドキドキしながらジッとしていたが、窓に映る彼の目線はスマホに固定されていて周りを見る様子もない。私の存在を感じていない様だ。

(「俺は霊感なんて無縁」って言ってたもんなぁ...)

部屋の中は何一つ変わっていない。すごく久しぶりにきた感覚と懐かしい気持ちが湧いてきた。棚の上には私がプレゼントした卓上時計がある 日付 曜日 室温がわかるデジタル時計だ。日付を見ると....私が死んだ日から1ヶ月くらい経っている。

(ほぉ〜時間と空間をワープしたわけね....ハイハイ死んだらよくあることウンウン。)

死んで霊体になったから驚かないのか、衝撃的な自分の死に様を観たから驚かないのか....。

考えてみたら三途の河へ行くわけでもなく光のお迎えも来ていない。『この世へ未練があると成仏できない』こんな言葉が一瞬思い浮かんだ。

(私には成仏できない理由があるんだろうか?)

死んだ時の開放感と爽快感を思うとこの世への未練なんて微塵も感じない。

(ま、そのうちお迎えが来るんだろう....)

今はきっと生きてる時にお世話になった人に会いに行ける最後の時間なのかもしれない。有効活用させてもらおう。

(死んだ今だからわかる事もあるかも。)

そうこう考えている間も 彼はずっとスマホをいじっている。

(それにしてもこの人ずっとスマホ見てるな....ゲームでもしているのだろうか....。)

彼の後ろからそっと画面を覗いてみる....LINEをしている。そんな真剣に長時間やり取りする相手は誰だろう....。

私が死んで生まれた日2

何が起こったのか理解できず、しばらくつっ立ったままだったが、異様な状態の自分の死体と周りの人々の恐れおののく様子やその野次馬をなるべく死体から遠く離そうと慌ただしく動く駅前交番から駆けつけた警察官と警察官より少し前に駆けつけていた駅員を眺めているうちにようやくわかった。

私は死んだ。

救いの余地なく一瞬で死んだ。

あの時私はホームに立っていた。乗る予定の電車の前に快速電車が通過するとアナウンスが流れ、自分の乗る電車はもう少しで来るなと考えていた。左の遠くのレール上に快速電車が見えた。その時右の方から近づいて来る若い女性の喋り声が聞こえたのを覚えている。

 

昨夜、私は恋人と喧嘩をした。些細な事での言い合いだったが険悪な状態のまま朝になった。結婚を約束してお互いの両親にも挨拶が終わっている。付き合って2年、喧嘩なんてした事がなかったのにお互いにタイミングが悪かったようだ。いつになく言われたことに過剰反応して噛み付いた私が悪いと思い、朝にLINEで謝った。いつもならお昼休みに入ったと連絡がある.....が、今日は彼からの返事はない。

 

左耳から電車の近づく音、右耳からは近づく人の気配と喋り声。

何度更新しても数字のつかない彼のLINE ID....少しイラついた ため息をひとつついた。

ドンッ!

「あっ!」

急に右の背中に衝撃があった。

そしてバランスを崩した私は.........。

 

自分の死体を自分で眺めている状態のままだった私は ハッと我に返り私をこんな酷い状態にした原因であろう人間を探したが姿は見えなかった。でも、何故か憎しみは湧いてこない。人って死ぬとみんなこうなのか⁇ とても不思議な感情、感覚だ。思えば生きている時より身体が軽い(当たり前か(笑)) 何というか....重い洋服を脱いで解放された感じ。

とても気分がいい。

ふと、彼は何をしているだろうか....?と気になった。死ぬ前に謝っておいてよかった。最後に少しでも話せてたらよかったのにと悔やんだ。そう思った途端、体がフワッと浮くのを感じた。