下書きメモブログ

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私が死んで生まれた日10-2【魂の記憶】

長は『星を捨て破壊する』と決断した。

まだやれることがあるのではないかと反対する者も多かったが

戦えぬ者達を守りたいという長の固い決断にみな従うことにした。

星と対話が出来る長はながい間星とも話し合ったとみなに伝え「これは星の意志でもある」と付け加えた。

私達の星は永い間 蛇族に身体をえぐられ身を搾取され続けたためにコアのエネルギーが著しく衰えてしまい星としての形も保っているのがやっとの状態になってしまっていて今までは宇宙の他の星からもエネルギーを分けてもらっていたが互いが干渉しずらい遠く離れた位置の周期に入ってしまうため死んでしまうのも時間の問題だった。

それならばまだコアが生きているうちに自らを破壊し、再生を試みるという。

塵になってはじけ飛んだ星のかけら達はわずかに残ったコアのエネルギーを頼りに再び集まるだろう。そして私達の星は生まれ変わる。だが、これは宇宙の理を無視した危険な賭けでもある。役目を終えた星は消滅後エネルギーの粒子になり一度宇宙へ還る。そして混ざり合い力を蓄えて新たにコアエネルギーができてから星が生まれてくるのだが、今回は私達の星のコアエネルギーを残したまま星を再生するのだ。どんなことが起きるか誰にも予想できない。もしかしたら未熟なまま再生しエネルギーの偏りが出たり、私達の子孫が住めない星になるかもしれない。

それに再生には永い永い時が必要だ。

なぜ、星はあえてそんな賭けをするのか・・・

宇宙の理に従った道を進んでもいいだろう、だがそうやって新たに生まれた星は私達の星ではない。生まれる時期も場所も星の性質だってどうなるかわからない。私達は母なる星を愛していたし星も同じく私達を愛していた。星が「まだ私達と共にいたい」と望んだのだ。珍しいと言えば珍しい。前例がないから試みたいという意思も伝わる。

長は「星の意志を尊重するために他の星々の光の存在達や大いなる存在にも助けを求めた。じきに使いが我々のもとにやってくるだろう。」と言い残し自室へ籠ってしまった。少しの間沈黙が続いたがそれぞれにボソボソと会話が聞こえ始めやがて大勢が色んな事を話し始め辺りがざわついた。「慣れ親しんだ愛おしい星を捨て何処に行けばいいというんだ」と声を荒げる者や「星と共に戦って共に散ろうではないか」と荒ぶる者や「星の意志ならば…」と考え込む者、「新しい場所へ行っても変わらずやっていけるんだろうか」と不安がる者もいた。私は共に長の話を聞きに父と母と一緒だった。父は眉間にしわを寄せ考え込んでしまっている。

父は蛇族がこの星に侵略し略奪を仕掛けてきたあの日に生き残った者達を助け出した英雄だそして軍の総司令官の側近だった。あの日、蛇族の暗殺者の手にかかり総司令官は命を落とした。内部と外部と両方から攻撃を受け皆がパニックになっている時に動揺する隊員たちをピシャリと制し先頭に立ち皆を率いた。新たなリーダーに皆すがり希望をみた。路頭に迷った者たちと生き残った隊員達とこの地、唯一凶行をまぬかれた母の故郷にたどり着き態勢を整えてなんとかこの場とこの地域の鉱物資源を死守した父は一時争いがおさまるとあっけなくリーダーから退いた。新たな総司令官にとの声が上がる中、父は知恵があり若く勇ましいリーダーが適任だとやや年老いた自分には大役過ぎると断った。母の故郷の長が皆の長となった。彼はこの星の数いた長達の中でとりわけ感がよく、他の星々の存在や星との会話もできたために今回の重大な決断がたった今言い渡されたのであった。

母は私を見つめて「あなたはどう思うの?」と言いたげな視線を投げかけている。しばらく母と見つめあって私は口を開いた。「新しい星やその土地に住む人達に出会うのはすごく刺激的だし興味があるけど、まずは星の意志の実行と蛇族撲滅のための作戦に参加しないと…そうでしょう?お父さん。」父はしばらく無言のままだった。母は何も言わずに今度は父に「あなたはどう思うの?」の視線を投げかけている。

 

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