私が死んで生まれた日8
浴槽にたっぷりと張られたお湯の中にゆっくり息を吐きながら頭のてっぺんまで浸かる。柔らかく暖かい液体の中は居心地が良かった。
死んだ時のことを思い出す。一瞬の出来事すぎて痛みはなかった。嫌な奴も浮気?(アッチが本命?)相手と病院送り、とりあえず生きてる時の裏切りへの恨みも晴らした。成仏できるだろうと思った矢先に身体がまるで生きてるかの様に実体化した。私も重体で病院にいるあの2人 同様.....
生かされている。
......かなり歪んだ形で。この世の理をガン無視して私は蘇った。ゲームならチートだ。違法だ。アカウントを抹消されるだろう。
(BANされたりしてw)
この世でチート行為してるなら取締る存在が私の元へ来るだろう。そうなったらどうなるんだろうか、抹消.....されるんだろうか.....。
まぁ、そうなれば本当の私の願いが叶うことになる。何も怖くない。
でも、苦痛に満ち溢れたこの世でいう『地獄』へ送られる事になったら.....?
地獄ってどんな感じなんだろう.....。
そう考えていてふと思い出した。
私はどれくらい湯船に使ってるんだ??そっか元々死んでるから息吸わなくていいのか(笑)
その時、湯船のお湯がゆらゆら揺れた。
何かと思い目を開けると大きくて筋肉質のしまった脚が見えた。
「うわぁ!!!!!」
ビックリしてお湯から顔を出すと、目の前にオッサンがいる。
伸び放題の長髪はクセ毛なのか少しウェーブがかかり緩やかに波打っていた。アボリジニ系の彫の深い目鼻立ちの顔。筋肉質の身体は何もまとっていなく、素っ裸で浴槽の縁に座っていた。
「よぉ(ニヤッ)」
オッサンはそう言うと、ニヤケ顔で前に乗り出し顔を近づけた。
知らない。知らないぞ?こんな人!でも、相手は何故か私をよく知ってる様な表情を浮かべている。
「だだだ、誰ぇぇぇ???!!!」
「なんだ?思い出さんか(笑)失礼な奴だな」
オッサン......そう言えば雷が落ちた時、ユウジさんが私を見てた霊体がいたって....。たしか....『大柄で長髪のオッサン』......??あれ?この人か??
混乱して目が泳ぎまくりの私を呆れ顔で見ていたオッサンは「ほれ」と手を出した。
「????」
キョトンとしている私に「ほれ、手ェだしてみぃ」とオッサンは要求する。
(こんな状態で初めましての握手はおかしいだろ@@:)
何故か言われる通りに恐る恐る手を出す私。
オッサンは大きな手でしっかり私の手を握ると
「準備はいいか?」
と言ってニヤッと片方の口角を上げた。